L + G - side parallel - 2 「ん、気持ちいい・・・」 ゆっくりと体を揺さぶってやれば、ナミは教室にも響き渡らぬほどの小声を震わせた。 本日はご機嫌らしい。 耳たぶを噛むと、ぴくりと肩を震わせる。 「お前最近エロくなってねェか」 「・・・・ん・・・ぁ・・・・」 俺の声が聞こえてるはずだが、懸命に絞った声を吐息に変えてナミの内襞が俺の息子を一段と締め付けた。中からは熱い蜜液が滴ってぬるりと繋がった部分から滴り落ちていく。じわりと俺の服まで湿っていく感触を覚えても、止める気はさらさらない。 この女の、セーターの下に隠れていたYシャツを捲りあげて、服の中でブラジャーをずらした。 固く尖った乳首を指で摘んで擦りながら俺の手にも余りある胸を揉むと今度は「痛い」と下から俺を睨み上げた。 「気持ちいいんだろ」 「・・・そんなことしないで・・・痛い。」 痛いって言うだけちったァ俺への警戒心を解いたのか。 初めての癖に我慢してたような女だからな。 身を捩った女の、その胸をじゃあ今度は舐めてやろうと服をもっと捲り上げたらまた「嫌!」と言われた。しかもさっきより声がでかい。 「何だよ。」 「見ないでよ、エッチ!」 エッチ───だと?! おい待て。今ヤッてんのは何だ。 セックスしてんじゃねェのか。今。 俺の息子はしっかりテメェん中に収まってるだろ。 「誰がエッチだ」 「じゃあオヤジ。」 「・・・・テメェ・・・」 ナミの肩を押し倒して、足を広げさせると、きゃあと小さな悲鳴を上げてナミがますます声を荒げた。 「何すんのよ!変態!」 「るせェ」 抗う足を押さえてナミの秘所を見ようとしたが、夕方の時間にもなれば陰影は濃くはっきりとそれがわからない。ただ滴る密液が俺の動きに合わせて艶やかに光るから、女も確かに感じているはずだと秘芯に指を当てた。クリトリスを摘む指に力をこめるとナミの体が大きく揺れた。 「やめてよ、やめてってば・・・あぁッ!」 「こんだけ締め付けてやがるくせに」 「・・・・・・・・ッ!」 ぎゅっと唇を噛んで、そっぽ向いた女に舌打ちを聞かせたい気分になった。 何でそう素直になんねェんだ、この女。 「また濡れてるぜ」 ・・・これでも駄目か。 「気持ちいいんだろ」 ───痛ェ。 こいつ俺の手に爪立てやがった。 猫の機嫌は変わりやすい。 休み時間に、クラスの女の子がきゃあきゃあ騒いでた。 あんまり大きな声で話しているから、聞こうとしなくても聴こえてしまう。こっちは予習してるんだからもう少し静かにして欲しいけど、そんな事言ったらガリ勉だとか真面目とか思われちゃうのよね。 ───プレゼント渡しに行くの? ───恥ずかしいもん。一緒についてきて。 ───えぇっ!?私ロロノア先生苦手なのに。 (えぇっ?!) 思わず彼女達を見てしまったら、シャーペンを右手に、辞書を片手にしていた私が勉強の気を散らされた怒ったのだと思ってしまった級友たちはすぐにピタッと会話を止めてしまった。 (やだ、あいつ今日誕生日だったの?) 何も聞いてないわ。 あの子たちその情報をどこで聞いてきたんだろう。 だって職員名簿にも誕生日は載ってないし、あいつも昨日何も言わないから・・・もしかして昨日送るって言ったのってそういう意味だったの? あいつが?まさか・・・───でも、もしかしたら私と誕生日を迎えたかったとか。 (・・・そんなわけないか。) じゃあどうしていつもは帰りのことなんて何も言わないのに、急に送るなんて言ったんだろう。 「ナミ、ナミ!」 教室の後ろの戸口から私を呼ぶ声が聞こえた。 見慣れた級友と、見慣れぬ男子が私を見てた。 ちょっと待ってと声を掛けて急いでケータイを取り出した。 メールアドレスを先生の名前で登録するわけにはいかないから、Zというイニシャルだけ。 アドレスを呼び出してメールを送信する。 待ってると送れば先生はその意味を悟って誰も居なくなった頃、教室へとやってくる。 今日は、だって、そうしなきゃいけない気がする。 送信済みの画面を確認して、ケータイを鞄に戻してから席を立った。 「最・・・・・・・・・・・・っ低」 冷たい目で俺を睨んだ猫はこっちが折角イッた気分に浸ろうにもそれも許すまいとばかりに未だ繋がったままの状態でそう言った。たっぷり間を持たせているあたり、まだご機嫌斜めと言ったところだろうが、ま、この女のことだからすぐにころっと機嫌良くなるかもしんねェしな。 とりあえず気を取り直して女の中でもう一度動くと、ナミが小さく吐息を漏らした。 伏せた睫毛はこの女の挑戦的な眼差しを隠していやにいじらしく思わせる。 肩を掴んだ腕に力をこめて女の髪に顔を埋めた。 「やだ、もうしないわよ。」 「──いつもテメェから誘うだけ誘っといて勝手言ってんな」 「誘ってないわよ。あんたが勝手に来てるんじゃない。」 「先生に向かって『あんた』とか言うな。」 「・・・・・」 叱りゃすぐだんまりだ。 うるせェよりはいい。 「早くどいてよ。」 「・・・もう一回」 「いや。どいて。」 俺のスーツにゃまだゴムが入ってるんだが。 どっちにしても替えるなら抜かなきゃなんねェか。 面倒だな。 「てめェも、もう一回してェだろ。」 念のため、女の意思を確認してみたが案の定睨まれた。 じゃあそんな締め付けんなよ。 言ってみたら女が背に爪を立てた。 しかも俺の服から手を入れて直に爪を立てる。 傷にならない程度だが、それなりに痛みはある。 背中っつーのは痛みに敏感なもんだ。 これがナミ相手じゃなきゃどんな女にそれをされてもやめろと言えるもんだが、この女はなかなか感じてることを素直に口に出さねェから、背の痛みぐらいでしか感情を慮ることが出来ない。 ヤッてる最中ならそうも思えるが今は終わった後だしな───叱ってやろうか。 こいつ俺が年上だとか教師ってことを忘れてるらしいしな。 ここらで教師らしいことの一つや二つ言っといてもいいだろ。 ナミを見やればさっさと服を着て髪を手で整えている。 そのすぐ帰りますと言いたげな態度も俺の気に食わない。 「おい、ナミ、お前・・・───」 (・・・・・お?) (・・・・・・おぉ?) こりゃ珍しいこともあるもんだ。 ナミの奴顔を真っ赤にしてやがる。 今何か言ったか? 何かしたか、俺。 俺の息子は・・・・しっかり収納済みだ。変なとこっつったらそこしか思い浮かばない自分が少々情けねェが、今この状況ではそれぐらいしか思い浮かばない。 この女が顔を赤くするようなことはしてねェはずだが。 ──誰か来たのか? 振り返って閉じられた教室のドアの向こうを見たが、HR前の掃除でキレイに拭かれた曇り一つないガラスの向こうには誰の姿もない。 耳を澄ましてみたが足音や、気配一つ感じ得ない。 「・・・なんだよ」 「何が?あんたから話し掛けてきたんじゃない」 「顔が赤ェ」 さらに赤くなった。 女ってェのはわけわからん。 「何の用もないなら帰るわ」 平然とした声で言えたかしら。言えたわよ、今までだってバレたことなんかないんだから。 だって私とこいつは先生と生徒だもの。 付き合うとか、普通の恋愛とか、そういうことを考えちゃいけない。 だけど昨日、もしこいつが何かしたかったなら今日だってチャンスを与えてあげなきゃ可哀想じゃない。そりゃ本人の口から誕生日って聞いたわけじゃないんだけど。 私───何してるんだろ。 昨日は何だったのって聞けばいいだけじゃない。 どうして聞けないんだろう。 (だって・・・───) 幾度となく自分に言い聞かせた言葉をまた心の中で呟こうとしたら切なくて涙が出そうになった。 こいつはどうせ私を尻軽な女と思っていて、だからいくら抱いても優しくなんてされたことはない。 本当は授業中に私の方だけ見てくれたり、誰にも内緒でデートに連れていってくれたり、そうしたら私もいつも見てただけのあの車の助手席に乗ったりするのかと思ってた。 でも授業中は変わらずに茫洋とした声で教科書を読み上げるだけだし、出欠を取る時、私の名前を呼ぶ声も他の生徒を呼ぶ声と何ら変わりない。 お互いのケータイのアドレスを交換しても休日に連絡なんか一度だってない。 私を適当にヤレる生徒だと思ってる奴だから、仕方ないと言えばそうなんだけど、じゃあ昨日はどうして送るなんて言ったのかがわからない。 今日が誕生日だからとしか思えないじゃない。 だからチャンスをあげるの。 私から言ったらまるで子供そのもの。 だからあいつから言うチャンスをあげるの。 今日こそもしかしたら聞けるかも知れない。 私のこと、どう思ってるの? ───駄目。 もしかしたらエッチの最中に聞けるかもって思っていたけど、こいつってばいつもと変わりないし、いつもは嫌って言ったら止めることをしてくれちゃって、尚更聞けなくなってしまった。 何なのよ。人がせっかく・・・せっかく、普通の恋人みたいにしてみようって思ったのに。 じゃあ、普通の恋人って何だろうって考えたら私はそれを知らない。 だってコイツしか知らないんだもの。 皆は彼氏と何を喋ってるんだろう。 エッチの最中に。 もっとすごいコト言うべきかしら。 (すごいコト・・・って、どんなコト?) いくら考えても考えても想像がつかない。 級友と、その彼氏の顔が浮かんで彼らが裸で絡み合ってる図を懸命に頭に思い描こうとしたけれど、それもまるで頭に霞が掛かってしまう。 冷たいドアに手を掛けた。 (やっぱり思い違いじゃない) こんな奴に期待するからいけないの。 私は何を望んでたの? 先生が私のメールを見てこの教室に来るだけで十分だと思ってたじゃない。 私の文字に先生がちゃんと来てくれるだけで良かったじゃない。 僅かに胸に湧いた期待のままに行動してバカみたい。 バカみたい。 今日も廊下を走ろう。 熱い瞼の裏に溜まった涙が流れ出す前に。 ほんの少し唇を噛み締めれば、我慢できる。 「じゃあね」 一日の最後の挨拶に先生という言葉は付けない。だってこの時だけは、私は先生の恋人で居たい。 でも今日は後ろ髪が引かれてたまらなくて、つい、振り返ってしまった。 先生が何も言わずにじっと私を見送っているから、胸が苦しくなった。 引きとめようともしてない。 さっき私の名前を呼んだ唇を開こうともしない。 その言葉にどれだけ私が喜びを覚えたかも知りもしないで。 だから、つい涙を隠していらぬ言葉を口にしてしまった。 「先生、私彼氏が出来たの。だから、今日で・・・───」 薄闇に紛れてぽつぽつと付けられていく違う校舎の光が先生の輪郭を際立たせていた。 良かった。 その顔を見てしまったら言えない言葉を言うことが出来る。 二日連続ってのは初めてだった。 俺への誕生日プレゼントを持ってきたという教え子の顔もろくに見もせず胸ポケットで震えたケータイを取り出す。俺にメールを、この時間に送ってくると言えばあの女ぐらいしかいない。 「あの、先生これ・・・」 「あぁ、そこらに置いとけ。」 女生徒は少し躊躇った後に友達に背を押されて小さな箱を机の上に置くとおめでとうございます、と小さな声で言って職員室を出て行った。 メールを見ればナミからでいつもと同じ文字だけが小せェ画面の中に映し出されていた。 珍しい。あの女、タイミングを見計らってるように1週間だとか10日だとかこっちがあいつとヤリたくなったらメールしてくるくせに、昨日の今日だと。 一瞬、脳裏にいやな想像が掠めていく。 まさか彼氏が出来たとか言うんじゃねェだろうな。 いや、それならメールで言やいいか。 じゃあヤリたいだけか。 何故か安堵の溜息が自然と漏れて、ケータイを胸ポケットにしまいこんだ後に机の上に乗せられていた小さな箱に目を落とした。 (俺の誕生日か。) プレゼントなんか大学に入ってからはもらったことねェな。 自分から言わなきゃ誰も知らねェから当然と言えば当然なんだが。 あの生徒はどこでそれを聞いたンだか知らねェが、どうせウソップあたりから聞き出したんだろう。 誕生日にはプレゼントするって感覚も若いよなァ。 俺にしてみりゃ誕生日はプレゼントより飲んでりゃそれでいいもんだが。 傍らに立って顔を赤くしていた生徒を思い出した。 仲の良い奴がその後ろで懸命に小突いて、ようやく声を振り絞っているという具合だ。 ナミと同い年に見えねェな。 ───ナミがアイツらと同い年に見えねェのか。 二人で会ってりゃガキに見えるってのにな。 いや、そんな事もねェか。 最近あの女、ヤッてる最中の顔が妙に大人びて見える時がある。 (・・・・・ヤベェ。) ナミの事考えてたらどうも・・・反射的に・・・─── 馬鹿馬鹿しい。 腹がぐっと詰まって、それが居心地悪ィってのに唇は緩む。 俺らしくもねェ。 |
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