11 海へ行こう!
「俺のいない間にそんなことがあったとは・・・
ああナミさん、そんなことも知らずに呑気に仕込みなんかしてた俺をどうぞ許してください」
今日の出来事を知らされたサンジは、そう言ってナミの眼前で跪いた。
「別にいいのよ、サンジくん。
それより今日はチョッパーに悪いことしちゃった。
明日は、チョッパーの好きな食事にしてあげてくれる?」
「まっかせてください♪」
そう言って、サンジはいそいそとキッチンに入り、明日の料理のための仕込みをし始めた。
ウソップが部屋から出て来る音が聞こえた。
「チョッパーはどう?」
ナミが声をかける。
「ああ、痛みもひいてきたって言ってる。
あいつだって、男なんだからナミより体は丈夫だぜ」
「チョッパー元気になったのかっ!?じゃあ俺・・・」と、椅子から飛び降りて、チョッパーの部屋へ向かおうとしたルフィはナミに耳を引っ張られて足を止めた。
「ルフィは面会禁止って言ったでしょ?!
あんたみたいに騒がしいのが隣にいたら、治るものも治らないわよ」
「ちぇっ・・・つまんねーの」
少年は、口をとがらせて、また椅子に座った。
「今回は脅しって意味もあるんだろうな」
ナミの部屋の扉が開いて、ゾロが欠伸をしながら出てきた。
「あン?クソマリモ、てめぇまだいたのか?」
「ここんとこ毎晩働いてたから、今日からしばらく休みだ。文句あっか。エロコック」
「休みならナミさんのベッドで仮眠する必要全くねぇだろうが!このムッツリマリモがっ!」
「あァ?てめぇ、ケンカなら買うぞ、コラ」
「はいはい、くだらないケンカはそこまで。
サンジくん、今日ゾロあんまり寝てなかったから私のベッド貸してあげたのよ」
はぁ〜いナミさん♪と途端にサンジが鼻の下を伸ばして、またキッチンへと戻る。
「俺、こいつ嫌いだな〜」
ルフィがテーブルに置いてあった4枚目のカードを手でひらひらさせて言った。
「顔は見なかったのか?」サンジがキッチンからカウンター越しにウソップに尋ねる。
「いや、目だし帽被ってやがった。体は大きかったけどな。でもいい物手に入れたぜ」
「いい物?」
「おぅ。いくら何でも、このマンション内で傷害事件が起こったんだぜ。
チョッパーがばあちゃんに知られたくないって言うから警察には言えねぇけど
管理人に言って、監視カメラの映像をダビングさせてもらったんだ」
「おお!でかしたウソップ!!」
ルフィが、サンジの出したデザートに早速手をつけながらテーブルをガタガタ揺らした。
鼻高々という態のウソップは両手を胸の前で組んで、胸を反らす。
「ま、こういう目の付け所もこのキャプテーン・ウソップ様ならではの・・・」
「いいから、早く見せろよ。それを」
ゾロがナミのグラスに注がれた酒を横から奪って飲みながら言った。
「お前なぁ、これを俺が手に入れるためにどれだけ苦労したと・・」
「これ?最近の監視カメラはDVDなわけ?」
ウソップが手にしていたDVD-ROMに気付いて、ナミが指を差す。
「いや、実際はパソコンのデータベースに保存されてるんだ。
最近の監視カメラは、その画像内で動く物を捉えたら作動してだな・・」
「あーはいはい、ルフィ、これセットして。あ、いいわあんたがやると壊されちゃう。
ウソップ、それ貸してちょうだい」
話の腰を幾度となく折られて、床に手をついて項垂れているウソップを残して皆がソファに座って画面に注目する。
しばらくして再生された画面に、画像が荒くわかりづらいものの、チョッパーがエントランスホールへ駆け込む姿が映し出された。
その後、チョッパーが内側のドアの横に備え付けられたインターフォンを押して、話し出す。
そこへ、ゆっくりとエントランスに入ってきた大きな男がチョッパーに近づいて、その拳を振り上げ、下ろす。
画面の端からウソップが攻撃したタバスコ星を顔面に受け、一瞬腰を曲げた大男は、そのまま目を抑えるようにして走り去って行った。
「・・・・これだけ?」
「・・・・これだけだ」
深刻そうな顔で、ウソップが頷く。
は〜と全員が溜息をついた。
「これだけじゃ何もわかんねぇぜ」
サンジがタバコに火をつけながら言う。
「俺もっとすごい奴想像してたんだけどなー」
「すごい奴って何よ」
「怪獣みてぇにさ、火を吐くんだ!それから目からビームが出て・・・」
「・・・・あんた、幼稚園に戻った方がいいんじゃない?」
「おお。よく言われるぞ!」
その時、一人画面に見入ったままのゾロが口を開く。
「こいつ、おかしくねぇか?」
全員の眼がゾロに注がれる。
「この真夏にこんな厚着してやがる。いくら何でも、こんな奴が町をうろついてたら、
誰の目から見ても明らかに不審人物だぜ。
でも警察も何も言ってなかったんだろ?この近くに住んでるか、車でここまで来てるか・・・
それか、このマンションかすぐ隣のビルで着替えるかだな」
「クソマリモ、てめぇにしては上出来だな。確かに、これで周りにバレてねぇってのはクソおかしいぜ」
そう言って、サンジは静止された画面をじっと見つめた。
件の男は、黒い皮ジャンに黒いズボンを身につけている。
その上、頭には黒い目だし帽。
こんな男が日中歩いていたら、即警察に通報されるであろうし、マンションの管理人も不審に思うはずだ。
「でもサンジもいつもスーツ着てるじゃねぇか」
「ルフィ・・・お前、俺に同じこと何回も言わせるな。
これは、店でウェイターもやるからクソジジイに言われて着てんだよっ!」
「暑そうだよなぁ」ウソップも横目でサンジを見る。
「俺らの部屋のクローゼットもほぼサンジのスーツで埋まっちまってるし・・・」
「こりゃ夏用のスーツだ!クソ野郎!」
「ねぇ、この犯人・・・」
ずっと考え込んでいたナミがおもむろに口を開いた。
「真夏の日中に、こんな格好するには、理由があるんじゃないかしら。
例えば・・・そうね、何か目立つ傷跡があってそれを隠したいとか。
それか、すごく有名人・・・とか?」
「ナミさんゥなんて頭の良い人なんだ!
そうに違いありません。ああ、まさに才色兼備とは貴方のために作られた言葉・・・」
「傷跡か・・・」
ゾロが呟いて、酒を呷った。
「まぁ、何とも言えないわよね・・・これだけだと」
しばし、沈黙が5人を取巻いた。
「よし!」
ルフィがポンと手を叩いて、顔を上げた。
「お、どうしたルフィ?何かいいこと思いついたのか?」
ウソップが期待した目で彼を見る。
「海に行こう!!」
「「「「・・・・・はぁ!?」」」」
みんなの声がハモった。
「あんたね、海に行こうって・・・いきなり何なの?それ」
ナミはあまりに唐突なルフィの言葉に手を頭にやる。
「ビビの別荘に泊めてくれるんだ」
「何でそこにビビが出てくんのよ」
「今日会ったから」
「・・・あぁ、あの子、生徒会の仕事があったのね。で、ビビが何だって?」
「明日と明後日、1泊2日で別荘に行かないかって言ってたぞ」
「おいおい待てよルフィ!そそそそれって、ビビちゃんお前を誘ってるんじゃねーか!?」
「ああ、だから海に行こうって誘われたんだよ」
「違う違う!俺が言ってるのはだなぁ・・・」
「大勢で海行くのが久しぶりだって喜んでたぞ」
「え?じゃあ俺ら全員誘ってんのか?」
「だからそう言ってるじゃねぇか。変な奴だなぁ。ウソップは」
「お前が紛らわしい言い方してるんじゃねーか!?」
ウソップがルフィの両頬を抓る。
「駄目よ、ルフィ」
そのオレンジ色の髪を左右に揺らしてナミが反対した。
「チョッパーは今日怪我したのよ?それで明日海だなんて・・・」
「俺なら大丈夫だよ!」
いつの間にか、居間の戸口にチョッパーが立っていた。
「チョッパー、あんた起きて大丈夫なの?」
「おお、チョッパー!元気そうじゃねぇか!」
ルフィが満面の笑みでチョッパーに駆け寄ると、最年少の彼がへへっと嬉しそうに照れ笑いを浮かべる。
「うん、ウソップがずっと看病してくれたんだ。俺、もう元気だよ。なぁナミ、海行こうよ。
俺も友達と海に行くなんて初めてだ!」
「だーめ。体中怪我してるのよ?」
「じゃあ、俺海岸で本読んでるよ。大人しくしてるから・・・」
瞳をキラキラと輝かせてチョッパーに頼まれると、ナミはどうしてもその願いを聞き入れてやりたくなる。
「でも、水着なんて持ってないわよ、私。みんなだってないでしょ?」
「俺は持ってるぞ」
「俺も持ってる」
「俺も」
ルフィ、ウソップ、チョッパーが口々に答えた。
「夏と言えば、合宿。合宿と言えば海じゃねぇか!」
ルフィがさも当然のように胸を張った。
「・・・あんた、一体何しにうちに来てるわけ?」
ナミが溜息をついて、サンジとゾロに同じ問いを投げかける。
「あんた達は持ってないでしょ?」
「俺は持ってますよ♪ルフィに水着持参って言われてましたから!ああ早く見せたいなぁ。俺の勇姿を・・・」
「俺は持ってねぇが、別に・・・」
「素っ裸でもいいとか言わないでよ?」
ナミの白い目にゾロがうっと言葉に詰まった。
「とにかくね、ゾロも私も水着ないんだから、無理よ。せめて来週末じゃ駄目なの?」
「でもなーもうビビに行くって言っちまったぞ」
「なんっで、相談する前にOKしちゃうのよっ!!」
ルフィがナミの拳骨で瞳に星を散らした。
「しょうがないわねぇ、ビビ起きてるかしら?」
時計を見ると、既に23時である。
お嬢さまのビビなら、もう寝ているかもと思いつつ、ナミは断りの電話を入れるために携帯電話を持って一人、部屋に戻って行った。
+++++++++++++++++++
「おい、ナミ本当に断っちまったのか?」
数分後、居間に姿を表したナミに、ルフィが心配そうな顔で尋ねた。
チョッパーも、海行きを懸念して、ナミを見上げた。
しばらく、ナミは彼らの顔を苦々しく見つめていたが、その唇から観念したかのような溜息を漏らした。
「・・・・行くわよ」
ひゃっほーと、年少3人が手を取って歓声をあげた。
心は既に海へ飛んでしまったらしく、うーみ♪うーみ♪と歌っている。
「でも、ナミさん水着は?」
「ビビのを貸してくれるって」
「じゃ、俺一人裸か」
「あんたのもよっ!!」
ナミは喜ぶ一同を見て、また頭に手を当てた。
「コーザ先生、今日はよろしくお願いします」
ナミが、ペコリと頭を下げた。
その男は、左眼の上に傷跡があるものの精悍な顔つきをしていた。
ビビの幼馴染でもあり、イーストブルー高校教諭でもあるコーザだ。
海行きを反対したビビの父、コブラが彼が保護者として行くならということで、彼らを引率することになってしまった。
「よぉ、生徒会長。今日はビビが我侭言って悪かったな」
その表情は、いつもの教師然とした固いものではなく、あまりに柔らかい笑顔だった。
学校でオールバックにしていた髪型も、今日は整髪剤もほとんどつけずにさらりとしたその前髪が顔にかかっている。
そうして見ると、随分年上に見えたこの教師も、一人の若者なのだと気付かされる。
ビビに以前、コーザは学校にいる時とプライベートではまるで違う人のようだと聞かされたことがあったが、学校での彼しか知らないナミは少々面食らってしまった。
「まったく、朝っぱらから起こしやがって・・・」
などと、ブツブツ言うものの、心底嫌そうではない。
「そんなこと言って、コーザ先生も本当はビビが心配でついてきたかったんでしょ?」
瞬間、コーザの顔がふっと和らぐ。
「まぁ、妹みたいなもんだからな」
(妹・・・ねぇ)ナミは心中、この不器用な男に苦笑せざるを得なかった。
いつも、ビビのことばかり見ているくせに・・・と言おうとしたが、口には出さない。
「ナミさ〜ん!貴方の特等席ご用意いたしました〜♪」
遠くからサンジが声を甘い声で呼びかけた。
その手は、自分の車の助手席を指差している。
そこには、ふわふわした白いシートカバーがつけられているのが、遠目にもわかる。
今回、総勢8人ということで、サンジの車も使うことになったのだ。
免許を持っているのは、コーザとサンジのみ。
メンバーは二つに分かれて目的地を目指すことになった。
「ナミさん、こっちに乗らないんですか?」
みんなの荷物を運ぶのを手伝いながら、ビビがナミに聞く。
「そうねぇ。久しぶりにビビに会ったんだし、ビビと一緒がいいかな。ビビはコーザ先生の車でしょ?」
「はい」
いつもビビが助手席に乗るのであろう、コーザの車にはビビが用意したかわいい缶ホルダーがつけられている。
(ほんと、これでお互い恋人同士じゃないと思ってんだから、救いようがないわ・・・)
と、ナミは心の中で微笑んだ。
「じゃあ、私もコーザ先生の車。みんなはどうするの?」
「俺は静かな方がいい。眠いからな」
「ゾロ・・・あんた、昨日仕事じゃなかったのに、何で眠いのよ・・・」
そう言いながら、ナミは横で大きな欠伸をする青年を睨みつけた。
「ルフィ、ウソップ、一緒に乗ろうよ!」
「おおっ!いいぞ!!」
「チョッパー、知ってるか?海の歌は数え切れないほどあるがなぁ・・・」
そう言いながら、3人が和気あいあいと既に一緒に乗る約束を交わしている。
「じゃ、決まりね。私とゾロがコーザ先生の車。サンジくーん、その3人頼んだわよ〜」
「な、ナミすわ〜ん・・・」
サンジの涙声に返事せず、ナミはコーザの車に乗り込んだ。
窓を閉めているのに、ルフィのふかふかだーという声が聞こえる。
どうやら、特等席には彼が座ることになったらしい。
ゾロは車に乗り込んだ一秒後にぐーぐーいびきをかいて寝てしまった。
朝日が昇りきらぬうちに、一行を乗せた2台の車が町を出た。
「ねぇビビ、別荘ってどこにあるの?」
「アラバスタ市です。元々は父の実家だったんですけど、今は誰も住んでないんです」
「アラバスタ・・・って、リゾート地で有名な所じゃない!海も綺麗なのよねぇ。ね、別荘から海は近いんでしょ?」
昨日あんなに反対したナミだって、実のところ数年ぶりの海は嬉しくて仕方がない。
仲間達の前でそれを見せたくはないという照れもあったのだが、今隣にいるゾロは夢の中。
彼女はようやくその心中を隠すことなく、ワクワクした表情で海へと意識を飛ばした。
「ええ、というか、海岸沿いに別荘があるんです。一応プライベートビーチだからのびのびできるんですよ」
さらりとそんなことを言うビビにナミはこのビビという後輩が、本当に『お嬢様』なのだと実感してしまう。
「いつもはコーザと一緒に行ってたんですけど、今年はみんなと一緒で本当に楽しみ!
ナミさん、スイカ割りしましょうね」
「ちょ、ちょっと待って。毎年、コーザ先生と二人っきりで・・・?」
運転しているコーザがコホンと咳払いする。
「・・・ナミ、お前何か勘違いしてるだろ?ビビが一緒に行きたいって駄々こねるから仕方なくだぜ?」
「コーザひどい!去年だってコーザが行きたいって言ったのに・・・」
「毎年行こうって言うから、俺が先に今年はどうするかって聞いただけだろうが!」
「あー、はいはい。痴話喧嘩はそこまでにしてくれる?お二人さん」
付き合ってられないわ、というようにナミが肩を竦めてしまったので、コーザも苦虫を噛み潰したような顔で黙ってしまった。
その後、車中でビビと当り障りのない話で盛り上がった。
ナミとしては、彼女の家に男が寝泊りしていることを教師に知られては・・・と警戒していたが、コーザは既にビビに聞いた後だった。
「生徒のプライバシーには首つっこまないことにしてる」というコーザに、ナミはほっと胸をなでおろした。
「じゃあ、私も泊まりたいわ。ナミさんの家・・・」とビビが言い掛けると、さすがに「駄目だ」と即答したのだが。
「ねぇナミさん、そう言えば、その方・・・」
しばらく話し込んでいると、不意にビビが助手席から振り返って、ゾロに視線を向けた。
「ああ、こいつね。えっと・・・ルフィの新しい仲間なのよ。ロロノア・ゾロって言うの。
ゾロッ!起きなさい!せめて自分の口から自己紹介しなさいよっ!!」
ナミが突然ゾロに平手打ちを喰らわせたので、ビビは慌ててしまった。
「な、ナミさん、いいですから・・・寝かせてあげてください」
「・・・お、朝か?」
ビビの制止も既に遅かったようで、ゾロが目をこすりながら、きょろきょろと辺りを見渡す。
「・・・・車?」とぼけたような声が車中に響く。
「あんたねぇ・・・もう忘れたの?今日は海に行くの!ここは海に行く車の中!
あんたは、この車に乗って、一瞬で寝ちゃったの!!」
「・・・あァ!」
手をポンッとあわせて、合点がいったような顔をしたゾロに、ナミは脱力せざるを得ない。
「本当にもう・・・ゾロ、この子がビビ。私の後輩なの。イーストブルー高校の生徒会長よ。
で、こちらがコーザ先生。イーストブルー高校の先生で、ビビの幼馴染」
「ゾロさん、初めまして!」
「・・・・おぅ」
「ね、ナミさん。ゾロさんとナミさんは付き合ってるって本当ですか?」
「付き合ってないわよっ!!」
「え・・・でも、ルフィさんが・・・」
またあいつかっ!と心の中で叫んで、ナミは冷静を取り戻して髪をかきあげた。
「ビビ、あのね。私がこんな貧乏フリーターと付き合うわけがないでしょ?
その上、万年寝太郎だし、方向音痴でね・・」
「おいっ!誰が方向音痴だ!!」
「あんたに決まってるでしょ?何で自覚できないのか、この際はっきり聞かせていただきましょうか?」
「・・・目的地には着いてるだろうが」
「半日かけたらね」
「お前の家の周りだって、もう覚えた」
「コンビニとスーパーへの道だけでしょ!徒歩5分以内じゃない!」
「んなわけねーだろがっ!どこだってわかる!!」
「ふぅん・・・じゃあ、クリーニング屋さんにはどうやって行くの?
ほら、一昨日一緒に行ったわよね?
さぁマンションを出たら、どっちに曲がるの?」
「・・・右だろ」
「ひ・だ・り・よっ!!」
「おい、お二人さん、痴話喧嘩はそこまでにしてくれねぇか?」
コーザが苦笑しながら言う。
あわててナミは顔を赤くして俯いてしまった。
「お二人とも、本当に仲がいいんですね」
ビビもくすくす笑っている。
そうこうしているうちに、眼下にアラバスタの蒼い海が見えてきた。
僅かに開けた窓から、潮の香りと後ろの車で「海だー」と騒ぐ3人の声が届いた。
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