全作品リスト>麦わらクラブメニュー>麦わらクラブ依頼ファイル1:過去にとらわれた少女
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12 男なんてこんなもんです




「着いたぞー!」
第一声と共に、ルフィが麦わら帽子を抑えながら車から走り出た。
俺も俺もと言うように、ウソップやチョッパーも転ぶようにして車を後にする。
「おい、お前ら自分の荷物ぐらい、自分で持てよ」
サンジがタバコを咥えながら、その両手に荷物を抱えて一人せっせと働いている。

「ゾロ、あんたも手伝ってきなさいよ」
「あァ?何で俺があんなエロコックを・・・」
「寝てただけのくせに、文句言わないの!」
ナミにそう言われて、ゾロは渋々サンジの車へと向った。

「あん?何だクソマリモ?」
「手伝いに来てやったんだよ」
「ああ、じゃ、それとそれと・・・ほい、これもよろしく」
「お、おい待て!ほとんど全部じゃねーか!!」
大きな荷物を3つ、突然渡されて一瞬足元がふらついてしまう。
「うるせぇ。これぐらい当然だ。お前何時間ナミさんの隣という特等席を占領してたと思ってる?」
サンジの目付きは至極真剣だ。
「ナミが決めたんだろーが。俺は寝てただけだ」
「寝てただけだとォ?お前、隣に座るレディーを退屈させてたってのか?とんだクソ野郎だぜ」
ふっとサンジがタバコの煙を吐き出した。
「まさか、どさくさに紛れてナミさんの可愛らしい手を握ったなんてことはねぇだろうな?」
「するかっ!俺は寝てただけだっつってるだろーが!」

そう言いながら、ゾロは昨日の夕方のことを思い出していた。
自分の手とは違って、柔らかかった。
いや、自分の手だけじゃない。
ゾロが知ってるどの女のそれよりもずっと柔らかく、その癖、その手はナミそのものなのだと思った。
絡められた細い指。もう自分から離すことができなくなった。
絡める瞬間に一瞬なぞられた手の甲が熱を帯びたままだった。
この手が、自分の体を触ったら・・・
自分は一体どれほどの快感に酔いしれるだろう、と、頭の中で彼女を抱くという妄想が広がった。
だから、ルフィに声を掛けられてナミが慌てて手を離した時、その手をまた引き寄せたい衝動に駆られた。
残された余韻は彼の手にまだ彼女の体温を伝え、それを逃したくなくてゾロは拳をぎゅっと握り締めたのだった。

「おい、何ぼーっとしてんだ?まさかお前・・・」
サンジの剣呑な視線に気付いて、ゾロははっと我に返る。
いつしか、昨日ナミの温度を感じた手を見つめて考え込んでいたらしい。
「馬鹿馬鹿しい」
疑いの目付きで自分を睨むサンジに聞こえるように呟いて、ゾロは別荘へと入って行った。


ビビの話によると、元は父親の実家ということだった。
レンガ造りの洋館は、まるで御伽噺に出て来るお城のようにも見える。

「誰も住んでないってのに綺麗だなー」とウソップが豪邸を見上げて言った。
「毎年、夏に来るので、その前にお掃除に来てもらってるんです」
「おお〜さすが金持ちは違うな〜」

見ると、芝生なども青々としてきちんと刈り揃えられている。

「あ、お庭は、近くに住んでいる方にお世話を頼んでるんですよ。
 こればかりはこまめに見てもらわないといけないらしくて・・・」
説明しながら、ビビが扉を開けた。

「どうぞゆっくりしてください」
開かれた扉の先には、広く、吹き抜けたエントランスホールがあり、その向こうには大きな窓になっていた。
上層の窓枠にはめられたステンドグラスが太陽の光で美しい色合いを醸し出している。
淡い色を纏った太陽の光が、エントランスホールを彩っていた。

「うわー綺麗!」
吹き抜けになったエントランスホールの天井には目を見張るほどの大きなシャンデリアが取り付けられており、窓から射し込むその光を受けて、その一つ一つの装飾品が競うように輝いていた。
ナミは思わず、驚嘆の声をあげた。

その横を、ルフィがシャンデリアに目もくれずに真っ直ぐに窓へと走っていく。
大きなガラス窓の向こうには、エメラルド色の青い海が一望することができる。

「すげー!!」
ルフィは、窓にへばりついて、その光景に見入っていた。
「おお〜こりゃすげぇなー!」ウソップとチョッパーもそれに続いて、窓にへばりついた。

「なぁビビ、どうやってこの窓開けるんだ?」
うずうずとする気持ちが体に現れているのか、ルフィが手足をじたばたさせている。

「えっもう泳ぐんですか?先にお昼を食べてからだと思ってたんですけど・・・」
「ビビちゃん♪心配しないで♪
 この愛の貴公子サンジがお弁当を作ってきたから、浜辺で食べよう。
 愛を語らいながら・・・」
ビビの肩に手を回してサンジが言う。

その後ろで、コーザが剣呑な目付きで睨んでいる。

(コーザ先生には悪いけど、ビビがいてくれて良かった・・・
 昨日の今日でサンジくんとは何か話しにくいんだもの。)

サンジは、昨日の朝のことなどすっかり忘れたかのようにいつものような軽口で、ナミと接していた。
だが、時折その目に真摯な色が灯ることがあり、ナミはそれをサンジの瞳に認めるたびに、胸の高鳴りと共に少々の吐き気を感じてしまい、サンジに気遣わせてはいけないと平静を装うことに神経をすり減らしていた。

サンジは優しい男だとわかる。
軽口でいても、その奥底にはサンジの優しさの本質が見え隠れしていて、この一週間、一緒に過ごしただけでもその人柄がルフィに気に入られているという意味をナミは知ることができた。
一人一人の好みの味を把握しているということもあるし、チョッパーが夏バテなら食欲が増進する食事を。ウソップが精密機器と睨めっこばかりして目を痛そうに抑えていたら、さりげなく目に良いとされるブルーベリーを使ったおやつを、次の日には用意しているのだ。

見た目も格好いい部類に入るのだと思う。
さらりと流れる金髪に、長い手足。
スーツはいつもブランド物で、けれども決して彼に合わない物ではないし、今日のようにスーツを着ることがなくても、自分の体型を最大限に魅せるためだろうか、程よく体型に合ったシャツを身に着けていた。

その彼に抱き締められ、頬とは言えキスをされた。

ナミの年頃の少女ならば、手放しで喜んでもおかしくないことだ。
けれども、ナミはそう思えない。
どうすればいいか、という恋の悩みではなく、どうしたらサンジに今の自分の体調を知らせずに済むか、それが彼女の頭に真っ先に浮ぶのだ。

そのため、ビビがいることによって、自分とサンジの会話が減るということはナミにとっては多少有難かった。

ビビに教えられた通り、エントランスの右の食堂に入る。
すると、やはり海側が窓になっているその食堂の隅に、外へ出る扉があった。
ルフィは周りがガラスを割ってしまうんじゃないかと心配するぐらいの勢いで外へ出て、バルコニーの端に据え付けられた階段から、砂浜へと降りて行った。

「ちょっとルフィ!海で遊ぶのは着替えてからよ!早く戻ってらっしゃい!」
水に足を入れる直前にナミが叫ぶ。

「じゃ、部屋割りをしましょうか」
ようやく戻ってきたルフィを食堂の椅子に座らせて、全員の顔が揃ったところで部屋を決めることになった。
「ビビ、どの部屋を使ってもいいの?」
「どの部屋でもいいんですけど・・・私とコーザは毎年来ているから、いつも同じ部屋を使っていて
 お互いの物が置いてあるんです。ですから、そこはちょっと・・・
 それがこのキッチンの真上にある部屋です」

そう言いながら、ビビが食堂とキッチンの間にある扉を開いた。
奥にキッチンがあって、その隅に上へと続く階段が見える。

「元は、お手伝いさん用のお部屋だったみたいなんですけど、一人で泊まるにはそこが一番良かったので・・・
 みなさんは、エントランスの階段を昇った先にある客室を好きなように使ってください。
 右に曲がって一番端の部屋にベッドが二つ。その手前に一人用の客室が二つ。
 左に曲がった一番奥はお父様が昔使っていた書斎があって手前に二つ、やっぱり一人用の部屋があります。
 各部屋にユニットバスは付いてるんですけど・・・
 二階の右端の部屋だけは、大きなお風呂がバルコニーに付いてます。」

「そうね。じゃあみんなくじ引きにしましょう」

そう言ってナミが手帳を取り出して、空白のページにあみだくじを書き始めた。

「はい、みんな好きなところに名前書いて!」

その言葉と同時に我先にと名前を書き込む。

「俺、海から一番近い部屋がいいなー」
「俺ぁ露天風呂だな。そこで酒飲むとうまそうだ」
「ナミさんと二人部屋・・・ナミさんと二人部屋・・・♪」
「俺、本読んでみたいから書斎の隣がいいなー」
「ルフィと一緒は避けたいな・・・俺は」

「書いたわね。とりあえず、右端の二人部屋を1号室として、そこから書斎までが順番よ。異論はないわね?」

ルフィが、楽しそうに「ないっ!」と言い切った。

結果を辿るナミに一同の視線が注がれる。



1号室→ルフィ、ゾロ
2号室→ナミ
3号室→サンジ
4号室→ウソップ
5号室→チョッパー



「やったぁ!俺、書斎の隣だ!ビビ、俺、本読んでもいいんだよな?」
嬉しそうに喜ぶチョッパーにビビが笑って頷く。
「おお〜〜〜!でかい風呂!」
「ルフィと一緒かよ・・・寝れなさそうだな」
「壁を一枚隔てた向こうにナミさんが・・・♪」
「よし、これで研究に没頭できるってもんだ」
心底ほっとした表情を浮かべたのはウソップだった。

「じゃ、部屋も決まったことだし、みんな荷物を自分の部屋へ持ってって。水着に着替えたら海岸に集合!!」
「「「「おー!!」」」」

威勢良く返事して、一斉に走り出す。

「ふふっ!今年は本当に楽しい」
ビビが嬉しそうに笑った。
「騒がしくてごめんね、ビビ。ねぇ水着貸してもらえる?」
「あ、そうでしたね。えっと・・・」
ビビが鞄をごそごそとし始めると、取り残されたように突っ立っていたゾロが口を開いた。
「おい、ナミ。俺の海パンはどうなってんだ?」
「ああ、あんたのはね、コーザ先生が貸してくれるって」

そう言われて、コーザがあぁと思い出したように鞄から黒いハーフパンツ型の水着をそのまま取り出して、ゾロに放り投げた。
「サンキュー」
受け取って、食堂を出ようとしたゾロの後ろで、ナミが「え、これ・・・?」とうろたえる声が聞こえた。



「行くぞー!ウソップ!!」「おおっ!」
そう言って、ルフィとウソップが真っ先に海へと入った。

次期は7月下旬。
一年の中で最も暑い日が続く7月の第三週の直後ということもあって、そのうだるような暑さの最中、水は心地よい冷たさを入る者に教えてくれる。
リゾート地として名を馳せるアラバスタの海ということもあって、その透明度は目を見張るものがあった。
「見ろよ、ウソップ!魚だ!」
「チョッパー来いよ!」
チョッパーは、痣を隠すかのようにパーカーを羽織ったまま足だけ海に入った。
「うわーこれ何ていう魚だ?俺、こんなの見たことないぞ!」
「いいか、チョッパーこの魚はな、このキャプテン・ウソップがとある南海の島で冒険した時にな・・・」
くだらないことで、三人が笑っているところに、サンジとゾロが浜辺に出て来る。

「っく〜この陽射し!白い砂浜!青い海!いいねぇ。早くナミさんの水着姿が見てぇな〜♪」
「・・・けっ。ラブコック」
「うっせぇ。むっつりマリモ」
「・・・んだとコラ?やるか?」
「おお、望むところだ!」

次の瞬間、二人は海へ向って走り出して行った。

呆気に取られるルフィやウソップやチョッパーを横目に、「あの岩まで行って先に帰った方が勝ちだ!」と水に飛び込んだ。
「おお、競争か!?俺もだー!」
ルフィも後に続く。

コーザはその様子を見て、ついクッと笑ってしまった。
「若いねぇ」呟いて、サングラスの奥の眼を細めた。

「ねぇビビ。やっぱりこの水着、ちょっと露出度高すぎない?」
「ナミさん、胸大きすぎます!去年私が着た時はそんな感じじゃなかったんだけどなぁ」
「あ〜でもやだ!やっぱり恥ずかしい!!私このシャツ上に着てくわ!」
「駄目ですよーナミさん!水着の上に何か着るなんて邪道ですっ!」
そんな声がコーザの耳に届いた。
振り向くと、そこには花のような少女二人が楽しそうにバルコニーからの階段を降りてくるところだった。

「あら?私達が一番最後だと思ったのに?」
ビビが人数の足りないことに気付いて、首を傾げる。
「あいつらなら、青春を謳歌中だぜ」
そう言って、コーザが沖を指差した。
そこには、緑と、金と、黒い頭が横一線になって沖の岩目指して進んでいくのが見える。
「楽しそうねぇ。ま、いいわ。今のうちにお弁当の用意しちゃいましょ。
 コーザ先生、ビーチパラソル広げて。あいつらが帰ってきたら、ちょうど準備も終わるでしょ」

ナミがもういつものこと、と言うようにてきぱきと荷物を広げ始めた。







ようやく準備が整った頃、コーザが思い出したように言った。
「ナミがあの男と付き合ってるなんてなぁ」
「あの男?付き合ってる?」

ナミが不思議そうに尋ねる。

「ロロノア・ゾロだよ」
「付き合ってはいないけど・・・コーザ先生、知ってるの?ゾロのこと・・・」
「ああ、俺も一応剣道やってたからな」

(そういえば・・・)

思い出す。
たしか、ゾロが剣道をしていたと言ったこと。
けれどもあの時、その話を続けるに続けられない雰囲気をゾロから感じて、すぐに話を切り上げてしまったのだ。

「コーザ、有名な人なの?」
「そりゃお前。ロロノア・ゾロって言ったら、剣道やってる奴なら誰でも耳にしたことあるんじゃねぇか?」
「へぇ・・・ゾロって有名なんだ」
「なんだ。ナミも知らなかったのか?あいつはジュニアから高校まで、ずっと全国優勝して・・・」
そこで、コーザは口をつぐんでしまった。
「全国優勝して・・・何?」ビビが不思議がる。

「あぁ、ま、これ以上は別にどうでもいい話だ。それにしても、奴も変わったな」
沖に浮ぶ、緑の髪を眺めてコーザが懐かしげに言った。
「変わった?」
「昔はえらく荒れてた・・・試合中だけならまだしも試合してねぇ時でも殺気立ってたな。
 ・・・いや、奴の場合は試合とも言えねぇか」
「それってどういう・・・」
「試合というよりは、果し合いとか・・・殺し合いとかか?ほら、剣道に防具があるじゃねぇか。
 アレをつけてても、あいつと試合した奴の中で打ち所悪ければ骨折とかな・・・
 色んな意味で『魔獣』なんて恐れられてたな」
「じゃあ、強いのね。ゾロさんって」
「そりゃ強いさ。俺だってあいつと同世代じゃなくて良かったと思ったぐらいだぜ?」
「・・・ゾロさんはMr.ブシドーだわ!」
「み、みすたーぶしどう?」
「ええ、ナミさんもそう思いません?」

たまに、ビビの感性にはついていけないことがある。
Mr.ブシドー・・・Mr.ブシドー・・・
その言葉が頭の中をぐるぐる回った。

次の瞬間、ナミは大声で笑っていた。
「そ、その通りよっ!あはははは・・・っ!
 ビビ、ナイスネーミングっ!!」

ビビも、大笑いするナミにつられて、満面の笑顔で笑っていた。
コーザは、そんな二人を見て、口の端をあげた。



「俺が一着だっ!」
「何を!?お前片目しか見えてねぇからって、事実歪めてんじゃねぇ!俺が先に着いただろうが!」
「うるせぇっ!これでナミさんの隣は俺が座ることに決定だ!」
「いつの間にそういう話になってるんだよっ!」

浜辺に着いた二人は、どちらが先着したかで言い争いを始めていた。
そこへ、遅れてルフィが到着する。
「ルフィ、お前・・・何持ってんだ?」
「おぅ!あの岩の下にいたんだ。こいつ!」
そう言って、ルフィが海から手を出して、そこに持った物を見せた。

「すげータコだ!」
チョッパーが駆け寄ってくる。
「すげーだろ。タコって刺身がうめぇからなー。サンジ、これ切ってくれよ!」
「そりゃいいけどよ。今日の昼ご飯はサンドイッチだぜ?タコの刺身は合わねぇだろ?」
「駄目か?」
「今日の晩飯に遣ってやる。ビビちゃんに言って、水槽でも貸してもらえよ・・・って。ンホー!!?」
サンジが、いきなり鼻の穴を膨らませた。

「どどどどーしたんだ、サンジ!」
チョッパーが、サンジのあまりの変貌ぶりに目を見開いて慌てている。

「おい見ろ、チョッパー・・・あの美しい花々を・・・」
「ハナ・・・?」
そう言って、チョッパーは隣にいるウソップを見上げる。
「その長っ鼻の『ハナ』じゃねぇ!
 お前にはわからないのか、あのお二人の美しさがっ!
 見ろ・・・ナミさんのビキニ姿・・・ああ、まるで可憐なカトレアがこの地に花開いているようだ。
 そしてビビちゃんのタンキニ・・・清楚なスズランが風に揺られたようだろうが」

「おー二人とも美味そうだな!」
ルフィが言う。
「る、ルフィ、お前がそういうこと言うなんて・・・」
ウソップがルフィに駆け寄った。
熱でもあるんじゃねぇか?とおでこに手を当てる。
「ナミは蜜柑みたいで美味そうだ!
 ビビはソーダみたいだなっ!」
ルフィはにっと笑った。

「ルフィ、その例えはクソ幼稚だが、わかってはいるようだな。
 ああ、俺はあの二人の内どちらかを選ぶなんてできねぇ・・・!」
「誰が、どっちを選べって言ったんだよ」
悶えるサンジに、ゾロが白い目を向けると「俺は、ビビかなー」と至極あっけらかんとした声音でルフィが言った。
「今、喉渇いてるからなっ!」

ウソップがずっこけて水に頭から突っ込んでしまった。
「ルフィ、お前なぁ・・・」
「ウソップはどっちだ?」
「うっ・・・お、俺は・・・」
赤い顔でウソップがナミとビビを交互に見た。

「俺も、どっちかってーと、ビビかな・・・」
「だよなー!」
「おい、てめぇら待て。今のクソ発言はよおく考えたか?」
「考えるって何をだよ?」
ルフィが不思議そうにサンジに尋ねる。

「揉み心地の問題だな・・・」
至極真剣な顔で、サンジが答えた。
「でかいのを揉み上げる時のたっぷりした感触を好むか・・・
 はたまたそれより小振りだとしても、自分の掌で包めることを望むか・・・
 ・・・くぅ〜俺には、やっぱり選ぶことはできねぇ!!」
「そういうことか・・・
 たしかに、でかい方がいいかもなぁ。
 小振り好きってのは、ある意味マニアックな響きがある」
ウソップも、目が真剣な色を示してきた。

「そーかぁ。じゃ、俺は多い方がいいから、ナミかな」
ルフィはあっさりと意見を覆す。

その横で、チョッパーがみんなの顔を見渡して聞いた。
「何の話してるんだ?」

「チョッパー、お前はまだ子供だ。知らなくていいことも世の中にはクソ多いもんだぜ」
風になびかれた金髪を揺らして、サンジが太陽を背にして言う。
何だかよくわからないけど、サンジは格好いいこと言ってるなーとチョッパーは瞳を輝かせた。

「チョッパー、胸だよ。胸」
ルフィがこともなげに、チョッパーに教えてしまう。

「胸?」
「おお!チョッパーはどっちだ?」
そう言われて、チョッパーは、さっきのみんなの会話を思い出した。

ぱっと二人の少女に目を向けて、しばらくじっと見ていたが、突然鼻血を出して倒れてしまった。
「おおおーーー!!チョッパー、しっかりしろっ!」
ウソップがチョッパーを抱き起こす。
「フッ・・・男は誰もが通る道だな」
サンジが首を振ってポーズを決めた。

「なぁゾロ。お前はどっちだ?」
ルフィがそれまで黙って皆の様子を見ていたゾロに話を振った。
「俺か?俺はなぁ・・・」
そう言って、眉を片方だけあげて、考え込でいる。

そんな彼へと注がれたサンジ・ウソップ・チョッパー・ルフィ全員の目が次の言葉を待っていると如実に示していた。

「胸より、あっちの締まりが・・・」
「ウソップ・チョ〜〜〜〜〜〜ップ!」
ウソップからの後頭部の打撃に、ゾロの声は遮られた。

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